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October 2021

税務の現場から

Stepped-up Basisと相続税条約

前回小欄にて、筆者が、IRS指針の執筆担当官僚から直接聴取を行っている事に言及したところ、「そこまでやっているとは、思わなかった」、「どうして、そういった官僚とコンタクトが取れるのか」等のコメントを貰った。 コンタクトを取るのは簡単だ。IRSが発行する財務省規則草案のPreamble、最終規則のTD、またその他指針の多くには、執筆者、担当者の名前、コンタクト番号が記載されているので、規則、指針の内容に不明な点があれば、その者に電話する。ただ、電話しても、電話を取ってくれる事は殆ど皆無だ(私の経験では、1度も取って貰った事は無い)。ボイスメールに、質問の内容を要領よく伝え、Call backを待つ。大体2,3日中にCall backをくれる。彼らはIRS内のOffice of Chief Counsel、Office of Associate Chief Counselに所属しており、弁護士である者とそうで無い者がいる。弁護士ライセンスが無くても、この国の財務省規則、指針を執筆している人も居るという事だ。 規則や指針の実際の執筆者に質問するのだから、何でも答えられるだろうと思いがちだが、そうではない。こちらも、重箱の隅をつつくような質問ばかりするからだ。これまで、即答頂けた事は殆どない。「同僚と確認したうえで、回答するので、数日~数週間待ってくれ」也の対応が多い。部署内で確認した回答を頂いても、またそれに対して追加質問をする場合もあるので、ケースによっては何度もやり取りを交わす。そのうち、直通電話を教えてくれる人も居る。 日本で勤務していた時代に、審理事務担当に連絡しアドバイスを仰いでいたが、審理に相談した経験のある読者ならば、国は違えど、税務の実務家と官僚とで如何なる対話が交わされるか、容易に想像がつくと思う。我々会計事務所は情報サービスであるが為、常に信ぴょう性の高い”ネタ”を追っているという点では、メディアに似ている。その為、出版社のエディター、弁護士、コンサルタントらとのつながりが重要なのだが、規則や指針を執筆している官僚から得る知見は、何ものにも代えがたいものだと思う。 官僚との接触を通じ、思いがけない経験をした事がある。Stepped-up basis(内国歳入法1014(f)条)に関する財務省規則草案が発表された直後、「日本の居住者が米国資産を遺して亡くなった場合で、相続税条約上の恩典を使えば米国エステートタックスが生じないはずなのに、諸々の理由にてエステートタックス申告書&条約開示(=Forms…
Masahiro Kusunoki
October 21st, 2021