駐車場経費の損金不算入及びERC

By September 1st, 2021 October 25th, 2021 税務の現場から

TCJAの下、内国歳入法274条が改正された為、企業が職員の為に負担する交通費、駐車場代につき、損金算入不可能となるケースが増えた。テナントビルの場合で、テナントが駐車場代込みでオフィス賃料を支払っている場合でも、同賃料に含まれる駐車場代相当分につき否認されるケースもある。否認されるケースの多くは、テナントビル駐車スペースの半数以上を自社職員が利用している場合。2020年12月に発表された財務省規則の下では、同一テナントビルの他のテナント職員や客らの駐車が過半数を占める状況においては、駐車場代相当分の損金算入が依然として可能な為、割を食うのは、大口のテナントだ(米国財務省規則1.274-13(b)(3)(ii))。逆に、小口テナントにとっては朗報なのだが、財務省規則の文言が、実務家を悩ませている。

Multi-tenant building. – If a taxpayer owns or leases spaces in a multi-tenant building, the term general public includes employees………clients, or customers of unrelated tenants in the building.

同一ビルのテナント職員や客は、‘一般大衆’と 見なされ、これら‘一般大衆’の駐車が過半数占めるか否かで、損金算入、不算入が決まる。が、この文言では、同一敷地内の複数のテナントビルが駐車場を共用している場合に、ルールが如何に適用されるかわからない。敷地内の他のビルのテナント職員や客までも‘一般大衆’と見なすのか。

LAも一歩郊外に出れば、広い敷地に低層のテナントビルが散在する箇所も多いため、本件多くのクライアントに少なからず影響するが、TD(=最終規則発表時に発行される解説)にも手掛かりはなかった。

結局、財務省規則を実際に執筆したIRS部署(Office of Associate Chief Counsel)に照会したところ、(部署としてではなく)一個人の考えと断った上で、「複数のテナントビルが同一敷地内の駐車場を共用する場合、全てのビルのテナント職員や客を‘一般大衆’と見なす」也の見解を得た。

実務において、財務省規則の執筆担当部署に直接コンタクト取る事は、滅多にないが、最近もう1件照会した事があった。それは、Employee retention credit(ERC)のルール運用においてFull-time employeesの数を勘定する際に、海外での勤労時間数をカウントするか否かという問題であった(内国歳入法3134、4980H)。日系企業にとっては、最重要の事案だが、この点については、「法に鑑み、誠実に対応してくれ」也の回答を得た。筆者も含め、当問題につき思案してきた実務家には、十分な回答であった。

筆者の紹介 ― 河村好司(kawamura@reiwa-us.com)。Reiwa Accounting にて移転価格やクロスボーダー事業、取引に関する税務コンサルティングを行う。税務調査、不服申し立て立ち合いの経験も豊富。今後も、実務にて得た経験をベースに寄稿予定。