国際税務コンサルタントも、申告書を作成する。筆者の場合も、海外資産の開示漏れ、非居住者のエステート、出国(877A Expatriation)等が絡むコンサルティングの一環として申告まで承る事が稀にある。申告書作成の過程でCFC、PFIC税制絡みの付表を作成する事もある。申告業務のコンピュータ化が著しい今日でも、それら税制コンプライアンスには、マニュアル作業が多分に残る。特にCFC税制については、TCJA以降、手がかかるマニュアル作業が寧ろ増えた。年々コモディティー化が進行する申告業務の中で、異例な状況とも言える。
TCJAの下、個人納税者にも965 taxが課せられたため、弊所個人クライアントの中にも、2017年及び2018年度のForm 1040にて同Taxを申告した方々がいた。2018年度申告時に965 taxを申告した納税者にとっては、今年が還付申告の期限にあたる。還付請求権が消滅する前に、965 taxを払い過ぎなかったか、確認する事を勧める。筆者の長年の申告・コンサルティングクライアントは、2018年度Form 1040にて965 taxを申告し、同taxを分割払いする手続きを行ったが、その2年後には日本に永久帰国した。米国市民でも永住権保有者でも無かった為、帰国の際には未払いの965 taxを完済した。965やGILTIも含めCFC税制では、個人納税者が選択すれば(= 962 election)CFC絡みの所得につき、法人税率でもって納税すると共に、間接外国税額控除の利用が可能になる。965 taxは、CFCの未配当利益に8%、もしくは15.5%の割で課税されるとうたわれたが、個人納税者にとっては、それは事実ではない。実際には、限界税率が21%の納税者を念頭に入れ、上述の利益が8%、もしくは15.5%割で課税されるよう所得控除を与える制度の為、限界税率が35%の個人納税者の場合、最高13.33%、もしくは25%にて965 taxを払った塩梅になる。それが、962 electionを選択すれば、額面通り、8%、もしくは15.5%での課税となり、税金計算上、CFCが払った外国所得税も税額控除出来る。T.D. 9901にてIRSは、修正申告書上で962 electionする事を明確に許可している。
962 electionは、高配当のCFC株式を長期所有する者にお勧めしない。965 tax申告後間もなく株式を処分したり、CFC税制の対象外となったりするケースにおいて、功を奏する。上述クライアントは、日本帰国後提出した修正申告書(Form 1040X)にて962 electionを選択し、払い過ぎていた965 taxを還付受けた。修正申告書には所定の962 statementに加え、以下の文言を添付した。
The taxpayers, per guidance under part X of the Summary of Comments and Explanation of Revisions section of T.D. 9901, are making a section 962 election on this amended return for the 2018 tax year. By making such election, the taxpayers determine tax on amounts included in their gross income under IRC Sec 951(a) at the corporate rate of 21%. Further, the taxpayers have the benefit of the foreign tax credit for certain foreign taxes paid with respect to the earnings and profits attributable to such amounts.
筆者の紹介 ― 河村好司(kawamura@reiwa-us.com)。Reiwa Accounting にて移転価格やクロスボーダー事業、取引に関する税務コンサルティングを行う。税務調査、不服申し立て立ち合いの経験も豊富。今後も、実務にて得た経験をベースに寄稿予定。